■コンフォルト 2月号 大竹 海氏書評
象設計集団の熱く建築する日々
 
約20センチ角のコンパクトな表紙に、4センチ近い厚みという独特の立体感である。この中には、象設計集団の33年間、熱く濃く建築を創造する日々、その過程で生みだされた形や言葉がぎっしりと詰め込まれている。これまでに考えてきたこと、実践してきたことを密実に投入してやろうという気合いと愛情に満ち、魂のこもった本である。読みごたえは十分だ。
 ページをパラパラやると、写真やらスケッチやら文字やらが乱舞し、ゴチャゴチャに賑やかである。実はこの〈ゴチャゴチャに賑やかな感じ〉が非常に大切なことであり、象(設計集団)のイメージする世界観を表現しているといえる。それは象の師匠である吉阪隆正の言葉〈不連続統一体〉の展開でもあり、本書にもある「7つの原則」のうちのひとつ、〈あいまいもこ(曖昧模糊)〉な世界の表現でもあるのだろう。ページをめくりながらひとつながりの時間と空間を紡ぎ出す〈本〉という形式の中で、様々な要素が互いに強く関係しあい、豊潤な総体をつくり出してゆく様を感じさせるのである。
 全体の構成は「いろはカルタ」を手掛かりに構成されており、例えば最初は「い」から始まる言葉、「色」からスタートし、次は「ろ」から始まる言葉、という具合に長文短文を問わず、様々な言葉や文章がスケッチや写真と共に連続してゆく。年代別や地域別というありがちな秩序を壊して、別次元の座標を置くことで各要素はシェイクされ、刺激しあい、ひとつの有機体となっている。本全体が生き生きとしている。
 読み進めながら強く引き込まれた点は、ひとつひとつの建築が生み出されるまで、そして10年、20年が経過して緑が豊かに茂った現在の様子までを、じっくりと丁寧に語っているところである。沖縄や台湾、宮代、十勝など、それぞれの地域の歴史や関わった人たちなどが生き生きと描かれて、建築とそこから膨らんでゆく物語を立ちあがらせてゆくのだ。
 この語り口は、象の建築に対する取り組み方がそのままに表れているものといえるのであろう。ただ竣工写真をべたべたと 貼った作品集とは一線を画して、血の通った奥行きがある。読み物としても非常におもしろいものだ。
 あまり頻繁にマスコミに登場しなかった象設計集団だが、その分、貯めに貯めたものがある。シノゴノ理屈ではなく、自らの理想に向かって行動し続けている事実が、ここにはある。決して平坦ではなく、デコボコとガチャガチャとした日々であったと思うが、33年間の蓄積、めくるめく色と形と言葉が詰まったこの本は、めちゃくちゃに強い。やはり強靱です。
 あたまから終わりまで、一語一句じっくりと読んでいってほしい。
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