自然を受け止め自然を楽しむ・・・保育園をつくる七つの原則 4
建築は,自然の影響をかなりの程度コントロールすることができます。気候を楽しむためには,厳しい暑さや寒さ,湿気を和らげるための工夫が必要となります。深い庇,土に覆われた屋根,風の道,防風林,パーゴラ(植物棚),木陰などは,私たちがよく用いる装置です。デザインの過程でもっとも重要なことは,建築と自然環境との調和を図ることです。建物の中で暑さや寒さを感じたり,季節の移り変りを感じたりできることは,大切な要素です。自然と共に暮らしてきた永い時間の中で,人間の身体は体内で時間の流れを感じるように進化してきました。私たちは,体内時計のリズムを守りながら,季節の移ろいに対する感受性を高めるような空間をデザインしたいのです。
省エネルギーが目的ではなく
その土地の気候風土に適した住まい方があります。そのような建築に暮らすことは、環境に調和して、省エネルギーです。しかし、省エネルギーを第一の目的にするのではなく、気候の特性を楽しんで暮らすことが大切です。それが生活の豊かさにつながるからです。北国では寒さを楽しみ、雪や氷で遊ぶ。南国では、夏の暑さを楽しみ、水で遊ぶ。春は花を楽しみ、秋には落ち葉を楽しむ。それが四季の豊かな日本で、環境に優しく生きて行く方法だと思います。気候風土に適した建物にする第一の条件は、太陽エネルギーの取り入れを建物そのものがコントロールすることです。南の地方では夏の太陽光をどのように遮断するのか、北の地方では冬の太陽光をどのように取り入れるのか、これが課題となります。建物の向き、窓の大きさ、庇の深さでコントロールすることが出来ます。

超高断熱
外部の熱を内に入れず、また内に取り入れた熱を外に逃がさないようにするためには、建物の断熱性能が重要になります。日本では北海道などの一部の地域を除いて、今までは建物に十分な断熱がなされてきませんでした。保育園もその通りで、十分な断熱がなされていないものが多いと思います。最近では住宅を建てるときでも、公庫の基準で一定量の断熱材を入れることが義務づけられるようになりました。私たちは、建物を出来るだけ高断熱にすることを薦めます。断熱材の値段は、その効果に比して十分に安いものです、公庫基準の倍以上の、超高断熱を目指して下さい。超高断熱の家は、夏涼しく冬暖かい素晴らしいものです。一般に言われているように、気密については、極端な寒冷地でない限り高度なものは必要ありません。むしろ低気密の方が住み心地がよいでしょう。

魅力的な外部
【園庭の形から決める】
魅力的な園庭を作るためには、園庭の形は大変重要な要素となります。園庭は、園舎を建てたその残りのものというのではなく、先ず最初に好ましい園庭の形を決め、その残りに建物を建てる、それぐらいの考え方が必要です。みんなで遊べる広場、池や小川のある一角、植物棚や砂場、動物小屋、様々な要素を部屋の設計をするように注意深く考える必要があります。
【外の居間】
外の生活をよりいっそう楽しむために、「外の居間」を作ることを提案します。「外の居間」は、柱と屋根があり、壁はあっても部分的なもので、小さな小屋のような建物です。もちろん靴のままは入れるスペースです。そこは「居間」ですから、食事をしたり、お昼寝をしたり、本を読んだりと、室内での活動と同じ事が出来るように、必要な家具類が備えられます。子どもを迎えに来た父母が、気軽に腰掛けて休めるような、気の利いた場所になるでしょう。
【テラス】

子どもが室内から外へ自然と活動を拡げるために、保育室や遊戯室に、上足のまま(あるいは裸足のまま)外に出られるテラスを付けるのが有効です。また、テラスから連続して園庭に出られるようにすれば、子ども達は内ー外をより活発に動き、活動の領域は園全体に拡がるでしょう。テラスの一部に屋根を付けたり、植物棚を付けてれば「外の居間」のように多様な使い方が出来ます。
【キャンバストップ】
キャンバス地で出来たテント屋根は、雨を除け、太陽の光を和らげ、透過する光で美しい場を作ります。保育園ではキャンバストップの利用価値はとても大きいものです。バオバブ保育園では、外で遊ぶ子ども達を紫外線から守るために、園庭にテントを張っています。このテントのおかげで、園庭がとても気持ちの良い場になっています。コンクリートで出来た園舎は、子どもの施設としては硬く見えがちですが、柔らかできれいな色のテント屋根を付ければ、親しみの持てる外観になります。
【青空階段】
2階に保育室がある時、2階へ上がる階段が屋内階段だけの場合は、どうしても園庭とのつながりが弱いものになります。園庭から2階または屋上へ直接上がれる「外の階段」が必要です。これは非常階段のように、建物の隅にこっそりついているものではなく、堂々としたものでなくてはなりません。2階の子どもがすぐに園庭に出られるように、勾配は緩いものにしましょう。子ども達ばかりでなく、保母さん達も日常的に屋内階段でなく屋外階段を利用するような組み立ての園舎ならば、それはきっと一体感のある自由な雰囲気の園舎になると思います。  
【はだしの生活】

埼玉県宮代町の笠原小学校では、4月から10月までの暖かい間子ども達は学校で裸足で過ごします。中には1年を通して裸足で過ごす元気な子どももいます。休み時間になると、子ども達は一斉に芝生の中庭に飛び出して遊びます。芝生や土や玉石や砂を踏みしめた足は、休み時間が終わると足洗い場で洗われ、教室へ戻ります。裸足で過ごせるような、優しい園庭を作りましょう。

動物を育てる
都市から動物の姿は消えてしまいました。馬、ロバ、牛、羊、ヤギ、鶏、アヒルなどの家畜ももう目にすることはありません。あるのはペットと有害な動物(ネズミなど)ばかりです。いままではウサギなどの小動物の飼育を行っていた小学校も、ますます消極的になっています。個人の家庭で飼育することはさらに困難です。子ども達が、動物たちと触れ合って大人になって行くには、もはや保育園しか頼るところがありません。保育園が小動物の飼育に積極的であってくれることを願うばかりです。

池と小川 
比較的安価に自然風の池や小川が作れます。園庭に池や小川となる溝、穴を掘り、底は粘土または防水シートで防水をします。その上に土を戻して、水生植物を植えます。屋根や敷地内に降る雨水を集めて池に流れ込むようにします。水中ポンプを一台使って、水を砂で濾過しながら循環させます。きれいな水の流れるビオトープを再生した池と小川が出来上がります。魚を飼ったり、昆虫の生息地にもなるでしょう。池の周囲に「野生の庭」を作れば、子ども達の人気の場所になるでしょう。実のなる木を植えれば、小鳥たちも集まって来るでしょう。

田圃
矢野南小学校(広島市)の屋上には、大きな田圃があります。写真からではとても屋上とは思えませんが、ここは子ども達の教材でもあり遊び場でもあり憩いの場でもあります。稲の育成には近所の農家の老人たちが、ボランティアで熱心に子ども達の面倒を見てくれます。親でもない先生でもない大人とふれあえる子ども達も幸せですが、子どもたちに自分の得意な技術を伝えられる、農家の老人たちも幸せです。地域の人と交流し、地域の人に愛され守られることが、子ども達のセキュリティーを保証するものではないでしょうか。

木を植える 
環境を良くするために、景観を美しくするために、私たちが、そして皆さんが、一体何を出来るでしょう。最も身近に出来ることは、「木を植える」ことです。あらゆる計画に於いて木を植えましょう。新しく建物を建てるときは、以前よりも樹木を増やすように配慮して下さい。計画地が大都市にあって、木を植えるスペースがないときには、壁面をツタで覆う、植物棚を作る、屋上に土を盛って緑化するなどの工夫を考えて下さい。それも出来ないときは窓辺を草花の植木鉢で飾ってください。
樹木による空間の緑化がもっとも大切です。

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大きな木と友達
今帰仁村公民館のローズウッドで覆われた緑の屋根(沖縄)
巡礼者の休息所(ネパール)
半外部の廊下・板デッキのテラス・庭
日よけテント(バオバブ保育園)
笠原小学校(埼玉県宮代町)
小さな動物たち
水の遊び場
ビオトープ・生息場所
矢野南小学校(広島市)
大きな木